バレエダンサーの憧れ『トゥシューズ』はいつから履ける?
バレエをはじめたばかりの人の中には、トゥシューズに憧れを持っている人も多いのではないでしょうか?
トゥシューズとは、つま先で立つために作られたバレエ専用の靴のこと。フランス語でつま先で立つ動作のことをポアントというため、トゥシューズそのものをポアントと表現する人もいます。
ポアントトレーニングの開始に伴ってトゥシューズを履くようになるわけですが、トゥシューズに憧れを持ち早く履けるようになりたいと考えている人であれば、そのタイミングは気になりますよね。今回の記事では、いつからトゥシューズを履けるのかについて、詳しく深堀りしていきたいと思います。
CONTENTS
トゥシューズを履くためには条件がある
トゥシューズを履くためには、いくつかの条件をクリアしなければいけないと言われています。何故ならトゥシューズを扱うためには、高い技量と十分な筋力、安定した骨格が必要とされているからです。そのため、バレエをはじめたばかりの大人や年齢の幼い子供が、トゥシューズを履くことはできません。
トゥシューズを履くための具体的な条件について、国際ダンス医科学学会によって作成された「トゥシューズのトレーニングを開始するためのガイドライン」を見てみましょう。
※このガイドラインは、バレエ学校に通う子供を基準としている部分が多く、大人には当てはまらないと思われる個所もいくつかあります。そのため、大人の方がトゥシューズを履くための条件については、次のセクションを参考にしてみてください。
①決して12歳以下ではないこと。
②もし解剖学的に適切な水準に達していないのなら、決してトゥシューズを履かせないこと。
③もし本気でプロを目指しているというわけでないのなら、トゥシューズを履くことを思いとどまらせること。
④もし胴体と骨盤(体幹の筋肉)や脚が弱いなら、トゥシューズの練習開始を遅らせること。
⑤足と足首が過度の関節可動域をもっているなら、トゥシューズの練習開始を遅らせること。
⑥もしバレエのレッスンが週1回なら、トゥシューズを履くことを思いとどまらせること。
⑦もしバレエのレッスンが週2回で、上記の条件に当てはまらないなら、バレエを始めて4年目にトゥシューズの練習を始めること。
When can I start pointe work? Guidelines for initiating pointe training
いかがでしょうか? これを見れば分かる通り、トゥシューズを履いてポアントのトレーニングができるようになるまで、かなり厳しい条件が存在しています。
①決して12歳以下ではないこと
特に印象的なのが、「①決して12歳以下ではないこと」という項目です。なぜ12歳以下でないこととしているのかというと、12歳の段階ではまだ子供の足の骨が成長を完了していないからです。
足の骨は、男の子であれば16歳、女の子であれば14歳で成長が完了すると言われています。そのため、12歳以前の年齢では足の骨がまだ成長段階にあり、トゥシューズを履くことによって骨の正しい成長を妨げてしまう恐れがあるのです。
しかし、14歳で成長が完了するのであれば、最低ラインが12歳なのはおかしくない?と思うかもしれません。その理由は、ガイドラインにおける12歳という年齢はあくまでも指標のひとつに過ぎず、12歳以前にポアントトレーニングを開始した子供が必ずしも怪我をしたり発育が阻害されたりするわけではないからです。
ガイドラインの中でも、このことに医学的な根拠は見つからなかったとされています。年齢以外にも、肉体的成長の度合いや技の熟練度などの様々な指標によって、ポアントトレーニングをはじめてよいタイミングは前後します。
そのため、12歳という年齢を絶対的な指標として、以降であれば絶対に安全、以前であれば必ず怪我や成長阻害を起こす、と言い切ってはいけないのです。
身体の機能面に過度なストレスを与える恐れも
また、ガイドラインの中では、12歳以前にトゥシューズを履くことの危険性として、上述した骨や関節の損傷よりも、関節可動域や筋力といった身体の機能面において、脚や骨盤、胴体に過度なストレスが与えられることを危険視しています。
ガイドラインの項目でいうと、②、④、⑤の項目ですね。ポアントトレーニングをはじめられるだけの肉体的強度を備えていない状態でトゥシューズを履いてしまうと、肉体に過度な負荷がかかり、思うような上達を得られないとされています。
例えば、甲が高く足首の柔軟性に優れた子供がいたとしても、トゥシューズを履いたときに身体を芯から支えられる筋力がなければ、正しいポジションを身に付けることはできません。
もちろん、筋力があったとしても足首の柔軟性に乏しく、伸ばしたときに脛と足首が平行ではなく「くの字」に曲がってしまうようでは、トゥシューズを履いてトレーニングをしても正しいポアントは身に付かないでしょう。
正しいポジションが身に付かないばかりか、今後の肉体的成長を阻害したり怪我を誘発したりといった恐れもあります。
複数の要素を総合的に見て判断する
ガイドラインについて深堀りしてきましたが、簡単にまとめてみたいと思います。
まず、トゥシューズを履いてポアントトレーニングを開始するためには、年齢や肉体的成長度合いなどの項目に関して一定の水準をクリアする必要があります。そして、そのクリアには、筋力や関節可動域、骨といった複数の要素が絡んでいて、これらの要素を総合的に見て問題がないと判断される必要がある、ということです。
トゥシューズを履いていい判断
では、その判断をどのように行えばいいのでしょうか? 次は、トゥシューズを履く条件を満たしているか否かの判断を、どのように行えばよいのかについて説明していきたいと思います。
前段のガイドラインとは異なり、大人も対象に含まれるので、バレエをはじめたばかりの大人の人も参考にしてみてください。
指導者が判断を下す
まず、トゥシューズを履いてポアントトレーニングを開始していいかどうかの判断を行う人は、自分自身ではありません。一般的には、指導者が判断を下します。
多くのケースでは、通っているバレエ学校や教室の先生になります。先生が当人の熟練度や肉体的成長の度合いを見て、ポアントトレーニングを開始しても問題がないと判断すれば、トゥシューズを履くことができます。
トゥシューズ着用許可の基準や目安
では、先生はどのような基準を持って判断をしているのでしょうか? 結論からいうと、先生ごとに許可を出す基準は異なるため、一概にこれといった答えはありません。
しかし、何も示せないのでは記事として役に立たないので、先生が傾向として挙げやすいトゥシューズ着用の目安をまとめてみました。
- バレエの基礎が身に付いていること
- 身体を正しく引き上げられること
- 体幹の筋肉があること
- 足首の柔軟性が高いこと
- 足裏の筋力があること
どれかひとつができていればよい、というのではなく、全ての要素を総合的に見て、一定の水準をクリアしている必要があります。ガイドラインの結論と同じですね。
それぞれの項目について、簡単に解説していきます。
バレエの基礎が身に付いていること
トゥシューズは、バレエの基礎が身に付いていなければ正しく扱うことはできません。
具体例として、大手バレエスクールのレッスン体系に注目してみましょう。多くのスクールがポアントクラスを用意していますが、大体の場合で「初・中級クラス」を受講できるレベルでなければ、受講を受け付けていません。
例えば、ANGEL R(エンジェルアール)バレエスタジオでは、下記のようにポアントクラスの受講を制限しています。
ポワントを履く為には、バレエの基礎が必要となります。必ず初級以上のクラスをご受講できるレベルになってから挑戦して下さい。
ANGEL R 公式サイト クラス ポアント
もうひとつ例を挙げてみます。PARK SIDE(パークサイド)バレエスタジオでは、ポワント入門のクラスの受講条件を下記のように挙げています。
ポワント入門
初級以上の方が対象です。
初級
バレエの動きひとつひとつを丁寧に指導しながら進めるクラスです。ベーシックなステップやシンプルなアンシェヌマン(コンビネーション)を学び、音に乗って踊る楽しさを感じていただきます。経験年数5年以上の方が多いクラスです。
PARK SIDE バレエスタジオ 公式サイト カリキュラム
どちらのスクールについても、ポアントクラスを受けるためには初級以上のレベルであることを要求しています。このことからも、トゥシューズを履くためにはバレエの基礎を修めている必要があることが分かります。
身体を正しく引き上げられること
身体の引き上げは、バレエを正しく踊る上で欠かせない技術です。腿の内側の筋肉や腹筋、背筋などを使って身体を引き上げることで、踊りにブレがなくなり安定感が生まれます。
トゥシューズのときは、バレエシューズのときよりもしっかりと身体を引き上げることが求められます。何故なら、身体を支えるポイントが指先だけになるからです。
バレエシューズのときにバランスが取れていないようでは、トゥシューズを履けるほど身体の引き上げができているとは言い難いでしょう。トゥシューズを履くためには、より高いレベルで身体を引き上げられるようになる必要があります。
体幹の筋肉があること
前段と同じように、トゥシューズを履くときは身体を十分に引き上げる必要があります。引き上げるための技術的な感覚を身に付けることももちろん大切ですが、同じように引き上げに関与してくる体幹系の筋肉を鍛えることも大事です。
ポアントをしても身体の軸がブレない体幹の強さが求められます。
足首の柔軟性が高いこと
足首に柔軟性がなければ、ポアントをしたときに関節や筋肉に余計な負担をかけてしまうことになります。柔軟性がないままポアントトレーニングをはじめたり続けたりしてしまうと、誤ったポアントで定着して変なところに筋肉が付いたり、足首や股関節などに負荷がかかり怪我をしてしまう恐れがあるのです。
目安は、ポアントのときに足の甲と脛が平行になるくらいの柔軟性です。ただし、柔軟性があっても筋力がなければ正しいポアントポジションは身に付かないため、その点は注意しましょう。
足裏の筋力があること
バレエにおいて、足裏の筋力というのは非常に重要です。足裏の筋力が強いほど、床をしっかりと捉えることができ、身体を支えられるからです。足裏の筋力が十分についていれば、ふくらはぎやアキレス腱に余計な力も入りにくくなります。トゥシューズを履くときはバランスが不安定になりやすいので、バレエシューズのときよりも強い足裏の筋力が求められます。
トゥシューズをいつから履けるのかは年齢や熟練度によって異なる
いかがでしょうか。トゥシューズをいつから履けるのか?について、詳しく説明をしてきました。結論として、トゥシューズを履けるようになるタイミングは、年齢や熟練度など複数の要素を総合的に見て指導者が判断を下すので、一概に「何歳からであればOK」「この条件をクリアすればよし」と言い切ることはできないものである、ということになります。
一番の近道は地道なレッスンで基礎を修めること
バレエをやっている人であれば、トゥシューズを履くことは憧れのひとつだと思います。すぐにでも履けるようになりたいですよね。
しかし、トゥシューズを正しく扱えるようになるためにはバレエの基礎を修める必要があり、それは一朝一夕で修められるようなものではありません。もし基礎を修めずにトゥシューズを履いてしまったら、正しいポアントを身に付けることは困難となり、憧れていたバレエダンサーのように踊ることから遠のいてしまうことになるでしょう。
トゥシューズを履けるようになる最短の道のりは、地道でも時間をかけて基礎を修めることです。遠回りに思えることもあるかもしれませんが、それが結果的に望んでいるようなポアントの実現に結びついてくれるでしょう。
▼トゥシューズとバレエシューズの違いについて知りたい方はこちらの記事を参照してください
トゥシューズとバレエシューズの違いをまとめ!ポアントの履き方もイラスト付きで解説
\ バレエ教室マッチング /
簡単な質問に答えるだけで、あなたの要望に合ったバレエ教室をAIが提案してくれるサービスです。
回答に必要な時間は3分程度。
登録・見積もりは無料なので、バレエ教室をお探しの方はぜひ一度試されてみてはいかがでしょうか。