バレエ作品『白鳥の湖』のあらすじや見所を紹介!世界中で愛される愛の物語

作品・カルチャー

バレエ作品の中でもトップクラスの知名度を誇る『白鳥の湖』。バレエのことをほとんど知らない方でも、名前だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。白鳥の湖は、チャイコフスキーが遺した三大バレエ作品のひとつであり、今もなお世界中で愛される珠玉のラブストーリーです。

今回の記事では、白鳥の湖について詳しく説明していきます。概要やあらすじだけでなく、見所や関連映画についても解説しているので、まだ白鳥の湖を観たことがない方はもちろん、すでに観たことがある方もぜひ読んでみてください。

この記事をお読みいただければ、白鳥の湖という作品の魅力を余すところなく理解していただけると思います。

三大バレエ作品のひとつ「白鳥の湖」とは

白鳥の湖とは、「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」と並ぶ、チャイコフスキーが遺した三大バレエ作品のひとつです。ドイツの作家、ヨハン・カール・アウグスト・ムゼーウスの『奪われたヴェール』という童話が構想のもとになっており、1876年に完成しました。

チャイコフスキーがはじめて作ったバレエ作品であり、初演当時は思うような評価が得られず苦労したそうですが、それでも一定の評価を得られていたようで、上演が途切れるようなことはありませんでした。しかし、現代のように誰もが知るバレエ作品と言われるほどの知名度を得ることはなかったのです。

白鳥の湖が人気を博し始めたのは、チャイコフスキーの亡くなってから2年後の1895年に、マリウス・プティパとレフ・イワノフが振付を担当したものが上演されるようになってからのこと。プティパ/イワノフ版は、現在世界中で上映されている白鳥の湖の基礎となっています。

バレエ作品「白鳥の湖」の登場人物

白鳥の湖に登場する主要な人物たち

ストーリーやあらすじについて説明する前に、白鳥の湖に登場する主要な人物をご紹介します。頭の片隅に入れておくと、ストーリーが理解しやすくなるかもしれません。

  • オデット姫:白鳥の湖のヒロイン。ロットバルトに呪いをかけられ、白鳥にされてしまう
  • ジークフリート王子:とある国の王子様。成人を迎え王位を継承することとなり、母から妃をめとるように言われている
  • ロットバルト:大きなフクロウの形をした悪魔。オデット姫に白鳥の呪いをかける
  • オディール:ロットバルトの娘。オデット姫にそっくりな容姿をしている
  • 侍女たち:オデット姫の仕えている侍女たち。ロットバルトに白鳥の呪いをかけられている
  • 王妃:ジークフリート王子の母親。王子に妃をめとらせるために舞踏会を開く

このほかにも、ベンノやヴォルフガングなど物語にかかわる登場人物はいますが、ややこしくなってしまうのでここでは割愛します。

バレエ作品「白鳥の湖」のざっくりストーリー

白鳥の湖のストーリーをざっくり説明します。


悪魔ロットバルトに呪われ、夜以外は白鳥として過ごす羽目になったオデット姫が、妃選びを迫られているジークフリート王子と湖で出会う。

オデット姫に惚れ込んだジークフリート王子は、彼女の呪いを解くために「永遠の愛の誓い」を約束するが、翌日の舞踏会でロットバルトが用意したオデット姫そっくりのオディールという娘に騙されて、オディールに永遠の愛を誓ってしまう。

ジークフリート王子はその場で騙されていたことに気が付くが、不運にもオデット姫がその様子を見てしまっていた。

絶望して湖に帰るオデット姫。

「あんな奴、忘れましょう!」と侍女たちが励ましているところにジークフリート王子が弁明に現れる。

当然ながら侍女たちはジークフリート王子を追い返そうとする。

しかしオデット姫はジークフリート王子への想いが忘れられず、葛藤の末に彼の過ちを許す。

そこにロットバルトが現れ、またもや2人の仲を裂くために画策するが、オデット姫とジークフリート王子の愛の力の前にロットバルトは敗れ、オデット姫の呪いが解ける……。


というものになります。

一気に説明したのでかなり雑になってしまいましたが、ストーリーの大筋はこのような流れです。このストーリーからも伺えるように、白鳥の湖はオデット姫とジークフリート王子の恋の物語となっています。次の節でより詳しく紹介しているので、もっと白鳥の湖について知りたいという方はぜひ読んでみてください。

バレエ作品「白鳥の湖」のあらすじ

それでは、白鳥の湖のあらすじについてご紹介します。かなり長いので、ざっくり知りたいという方は、前節の「ざっくりストーリー解説」を読んでいただくのがおすすめです。

序奏|オデット姫

オデット姫が侍女たちと美しい湖のほとりで花を摘んでいると、フクロウの姿に化けた悪魔、ロットバルトが突然現れた。フクロウ姿のロットバルトが不気味に翼を羽ばたかせると、オデット姫たちは白鳥に変えられてしまい、美しかった湖のほとりも荒れ果てた岩だらけの湖になってしまった。

第1幕|ジークフリート王子の憂鬱

王宮の前庭で、ジークフリート王子が成人を迎えたことを祝う宴が開かれていた。ジークフリート王子の友人や家庭教師が、連れてきた村娘たちと飲めや歌えの酒宴を起こしており、宴はまさに青春最後の大騒ぎ。

ジークフリート王子も表向きは陽気な態度で宴に参加していたが、心中は憂鬱だった。何故なら、成人を迎えたことにより、自分が王として国を治めなければならなくなるからだった。

これまでは、亡き父に代わり母が国を治めてきたが、息子である自分が成人を迎えた以上、母に代わり王位を継がなくてはいけない。国や民を治めることの責任の重さ、そして後継ぎのために早急に王妃をめとらねばならないこと。

王としての責務に重圧を感じ、ジークフリート王子は憂鬱な気分となっているのだった。特に、王妃をめとらねばならないことはジークフリート王子を憂鬱にさせていた。ジークフリート王子は、本当の恋を経験したことがない。そんな彼にとって、王妃をめとることを急かされるのは大変な重圧だった。

そこへ、母の王妃が現れた。浮かれているジークフリート王子たちを厳格な態度で窘め、王子に誕生日祝いの立派な弓を渡すと、「明日の舞踏会に花嫁候補を何人か呼んであるから、その中から妃を決めなさい」と言い渡すのだった。

王妃が帰ってからも宴は続き、ジークフリート王子も努めて明るく振舞っていたが、突然言い渡された妃選びにより、一層気分が沈んでいくのだった。

ジークフリート王子がふと空を見上げたとき、美しい白鳥の群れが飛んでいる姿が見えた。自由に空を駆ける白鳥たちに惹かれたジークフリート王子は、貰った弓を片手に宴を抜け出して白鳥を追うのだった。

第2幕|運命の出会い

白鳥を追いかけたジークフリート王子は、岩ばかりの荒れ果てた湖にたどり着いた。いつのまにか夜を迎えており、月夜に照らされた湖の上には白鳥の群れが泳いでいた。群れの先頭にいる白鳥は頭に王冠をいただいており、ジークフリート王子はその白鳥に向けて弓矢を構えた。

しかし、気配を察した白鳥の群れは一斉に羽ばたいて逃げていった。ジークフリート王子が失態を悔しがっていると、湖の近くにあった聖堂の廃墟が突如として光り輝き始め、王冠をいただいていた白鳥は美しい娘に変わった。ジークフリート王子は驚きと同時に、その娘のあまりの美しさに心を奪われた。

白鳥の娘は、はじめのうちは自分を射ようとしたジークフリート王子を警戒していたが、誠実に謝罪する彼の姿を見て徐々に心を開いていき、自らの素性を明かして白鳥となった経緯について話し始めた。

大きなフクロウの悪魔に呪いをかけられてしまい、それ以来、夜のあいだだけ聖堂の廃墟の近くでのみ人間の姿に戻れること。この呪いを解く方法はひとつだけしかなく、それは今まで誰にも愛を誓ったことがない青年から永遠の愛を誓われることであること……。

オデット姫の話を聞いたジークフリート王子は「私が永遠の愛を誓い、あなたを呪いから救い出します。明日の舞踏会で花嫁を選ぶことになっているので来てください。そこで永遠の愛をあなたに誓います」と言った。

少しずつ心を惹かれていたオデット姫は参加したい気持ちを胸に抱くが、呪いのせいで夜のあいだしか人間には戻れないため、舞踏会には参加できないと返事をした。

するとジークフリート王子は、「あなたが来られないのであれば、私はほかの女性を選ぶことはしません」と約束し、その愛を受けオデット姫は心から満たされた気持ちになるのだった。

しかし、湖の上から大きなフクロウが羽ばたくような音が聞こえ、オデット姫は警戒心を強めた。そして、ジークフリート王子に「大きなフクロウは老獪な悪魔です。この会話も聞かれているかもしれない。罠にお気を付けください」と忠告した。

2人が話していると、湖にいた白鳥が次々に娘の姿へと変わり始めた。この娘たちはオデット姫の侍女であり、ジークフリート王子の人柄を認め、湖から出てきたのだった。オデット姫、ジークフリート王子、侍女たちは、人間でいられるこの時間を楽しく過ごそうと、みんなで踊りを踊った。

しかし、いつのまにか夜が明けると、ロットバルトが現れ、オデット姫たちを白鳥の姿に戻してしまった。ジークフリート王子は湖の上を泳ぐ白鳥たちを眺め、これまでの出来事が夢だったのだろうかと立ち尽くしていたが、やがてオデット姫が去り際に残していった白鳥の羽を拾い上げ、この出来事は現実であることを確信した。

そして、自分の心の中にあるオデット姫への愛を改めて自覚し、決意に満ちた様子で帰路につくのだった。

第3幕|ロットバルトの策略

翌日、王宮の大広間で舞踏会が開催され、そこにはジークフリート王子の姫君候補がたくさん訪れていた。

皆、ジークフリート王子に気に入られようと愛想を振りまき、王妃はジークフリート王子に「どの娘が気に入りましたか?」と聞くが、ジークフリート王子はオデット姫との約束を守り「私は今日、誰とも結婚しません」と言い放った。王妃は落胆し、大きなため息を漏らした。

そのとき、新たな来客としてロットバルトという大貴族が、娘のオディールとともに舞踏団を引き連れて現れた。ロットバルトという貴族を知っている者は誰もいなかったが、オディールの容姿はオデット姫にそっくりであり、ジークフリート王子は驚くと同時に心を奪われてしまった。

オディールから誘うように微笑まれ、ジークフリート王子は「オデット姫が呪いの問題を解決して舞踏会に訪れてくれたのではないか」と思い込んだ。

ジークフリート王子は早くオディールと話したい気持ちに駆られていたが、ロットバルトの舞踏団が踊りを披露し始めた。スペインの踊り、ハンガリーの踊り、ポーランドの踊りなど、様々な国の踊りを披露し、その見事なダンスに貴族たちは魅了され、すっかりロットバルトを本物の貴族として信じ込んでしまった。

舞踏団の踊りが終わった後、ジークフリート王子はようやくオディールと踊ることができた。オディールはジークフリート王子を巧みに誘惑し、ジークフリート王子は完全にオディールの虜となってしまった。

その頃、大広間の外にジークフリート王子を心配したオデット姫が、白鳥の姿で現れた。オディールに誘惑されるジークフリート王子を見て、必死に羽ばたいて注意を促すが、ジークフリート王子はオディールしか見えておらず、ついには、オディールを連れて王妃のもとへいき、「母上、私はこの人を妃として選びます」と言ってしまった。

王妃は、見知らぬ貴族の娘とはいえ、王子が花嫁を選んでくれたことに安堵し、2人を祝福した。そして、ジークフリート王子は、オディールの父であるロットバルトに結婚の許可を願い出た。ロットバルトがすまし込んだ様子でジークフリート王子に永遠の愛の誓いを求めると、オディールに惚れこんでいるジークフリート王子は、その場で跪いてオディールに永遠の愛を誓った。

すると、大広間が一気に暗闇に包まれ、外で雷が轟いた。驚いたジークフリート王子が窓の外を見上げたとき、嵐の中を羽ばたいていく白鳥の姿が見え、そこでジークフリート王子はようやく、自分がロットバルトとオディールの策略に嵌められてしまったことに気が付いた。

ロットバルトとオディールの高笑いが広間に響き渡ると、ジークフリート王子はその場に崩れ落ち、王妃は愕然とする王子を抱えて悲劇を嘆いた。そして、ジークフリート王子はオデット姫を探すために、王宮を飛び出した。

第4幕|愛の力

湖では、オデット姫を待つ白鳥の娘たちが、心配な気持ちを紛らわせるために陽気な振りをしてダンスを踊っていた。そこへオデット姫が帰ってきた。

オデット姫は衰弱した様子で舞踏会の出来事を侍女たちに話し、ジークフリート王子がオディールに永遠の愛を誓ってしまった今、自分たちの呪いを解く方法はないと告げた。侍女たちはオデット姫とともに悲しみに暮れ、ジークフリート王子のことなど忘れてしまおうとオデット姫に言った。

そこへ、ジークフリート王子が現れた。侍女たちはジークフリート王子を追い返そうとしたが、必死に許しを乞う王子の姿を見たオデット姫は、王子のことを愛する気持ちを断ち切ることができず、彼の過ちを許した。

そして、残されたわずかな時間でジークフリート王子と踊りを踊った。

夜明けが近づいてきた頃、ロットバルトが大きなフクロウの姿で現れた。ロットバルトは、ジークフリート王子にオディールとの約束を守るように言って彼を追い払うと、オデット姫を白鳥の姿に変えて湖に追いやるのだった。

オデット姫との仲を引き裂かれたジークフリート王子は、ロットバルトに戦いを挑んだ。悪魔の強大な力をもつロットバルトに劣勢を強いられるジークフリート王子だったが、オデット姫に対する深い愛の力により逆境を跳ね除けた。オデット姫も白鳥の姿ながらジークフリート王子に力を貸し、ついに2人は力を合わせてロットバルトを打ち滅ぼすことに成功したのだった。

白鳥の湖の見所|オデットとオディールを1人2役で演じ分ける

白鳥の湖の見所と言えば、何といっても1人のバレリーナがオデットとオディールを演じ分けることです。

オデットとオディールは、あらすじをご覧いただければ分かる通り対照的な存在です。清廉な人柄で深い愛に満ちた白鳥のオデットと、妖艶な魅力で男を虜にする黒鳥のオディール。正反対の2人なので、演じるときにはまったく違う表現が求められます。

白鳥のオデットには柔らかく包み込むような優しい踊りが求められ、黒鳥のオディールには異性を誘うような挑発的で強引な踊りが要求されます。白鳥の湖では、これだけ対照的な2人をわずか2~3時間の間で演じ分けなければいけません。

非常に難しい役どころなだけに、そこにはバレリーナの技術の粋が詰め込まれています。白鳥の湖を観る際は、ぜひこの演じ分けに注目して観てみてください。

1人2役となったのは、ピエリーナ・レニャーニができちゃったから

初演時、オデットとオディールは別のバレリーナが演じていました。しかし、1895年にマリインスキー・バレエ団のプリマ、ピエリーナ・レニャーニが1人2役を演じきったことから、オデットとオディールを1人のバレリーナが演じるようになりました。ジークフリート王子がオデットとオディールを見間違えることが物語の起点になるため、できれば2人の容姿は似ていたほうがいいです。ただ、それまで別のバレリーナが演じていたことからも伺える通り、性格が真反対の2人を1人のバレリーナが演じるのは容易なことではありません。無謀とも思えるこの挑戦をやってのけたピエリーナ・レニャーニは、本当にすごいバレエダンサーだったと言えますね。

白鳥の湖を題材にした映画『ブラックスワン』

白鳥の湖と聞いて、映画『ブラックスワン』を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか? ブラックスワンは、白鳥の湖の主役を演じるバレリーナの苦悩をサスペンスタッチに描いたバレエ映画です。母親の期待や同僚の嫉妬、役へのプレッシャーで徐々に狂っていくヒロインのニナを、主役のナタリー・ポートマンが見事に演じ切り、映画批評家たちから「素晴らしく気味が悪い」などの好評価を得ました。また、その怪演ぶりが評価され、ナタリー・ポートマンは今作でアカデミー賞の主演女優賞を受賞しています。

ブラックスワンは、サイコスリラー作品として作られているため、実際の舞台裏があそこまで狂気に満ちていることはありませんが、母親が娘に過度な期待を寄せたり、同じバレエ団で役を奪い合ったりなどのことは、バレエを生業としている人間であれば一度は目にしたことがある光景です。そういった意味でブラックスワンは、まるで現実味のない映画というわけではなく、むしろバレエの狂気的な部分を煮詰めて煮込んで凝縮したリアルな映画といえます。

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絵本で白鳥の湖について理解を深めるのもおすすめ

白鳥の湖を理解するにあたって、あらすじや原作を読むのもいいですが、絵本を読んで理解することもおすすめです。視覚的に分かりやすく、子供でも内容が頭に入ってきやすいので、自分の子供や教室の生徒に白鳥の湖について教えるときは、ぜひ絵本を活用してみてください。

白鳥の湖の絵本は様々な著者から出版されていますが、おすすめはいわさきちひろさんの名作絵本シリーズです。淡く繊細なタッチの絵柄で、白鳥の湖の世界観を見事に表現されています。子供だけでなく大人にもおすすめできる素敵な絵本です。

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『くるみ割り人形』についても解説記事を上げておりますので、もしよければこちらの記事も読んでみてください。

くるみ割り人形の解説記事


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