【モダンバレエとは?】クラシックとの違いや子供に習わせるメリット
皆さん、バレエという言葉を聞いてどんなものをイメージしますか? 多くの方が、可憐な衣裳を着たバレリーナがクラシックの音楽に合わせて踊る姿を想像されると思います。
実は、そのイメージは、バレエの中の一種類である「クラシック・バレエ」と呼ばれるもの。意外に思われるかもしれませんが、バレエにはいくつかの種類があり、皆さんが想像したものはその中のひとつになります。
今回の記事では、数あるバレエの種類のひとつ「モダン・バレエ」について解説。モダンバレエの概要やその成り立ち、クラシックバレエとの違いについて、詳しく説明します。また、子供に習わせる際のメリットについてもご紹介。モダンバレエについて興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
CONTENTS
モダンバレエとは?
モダンバレエを一言でまとめるなら、「現代的で自由なバレエ」といえます。
クラシックバレエは作品ごとに振付や音楽、衣裳が決められていますが、モダンバレエはこれといって決まった衣裳や音楽がありません。振付も、音楽も、衣裳も、振付家が自由に創作してよいとされています。
バレエの象徴であるトゥシューズを履かない作品も多く、中にはバレエシューズさえ履かずに裸足で踊るものも。
クラシックバレエの枠組みに縛られず、とにかく自由に表現できることがモダンバレエの特徴です。
モダンバレエの成り立ち
諸説ありますが、発祥の時期は20世紀の初頭といわれています。
当時、クラシックバレエはマリウス・プティパによって確立されてましたが、その古典的な世界観に不満を持つものがいました。
その中のひとりに、「ミハイル・フォーキン」というロシア出身のバレエダンサー・振付師がいます。フォーキンは、モダンバレエの方向性を確立した人物と呼ばれています。
クラシックバレエの形式的な美しさに疑問を感じていたフォーキンは、形式を重んじるのを止め、より物語の内容を表現することに力を入れるようになります。
ストーリーに関わりのない群舞を排除したり、それまでのクラシックバレエにはない新しいステップや民族舞踊を振付に採り入れたりするようになりました。
その後、フォーキンはロシアの芸術プロデューサー「セルゲイ・ディアギレフ」に見出されます。
ディアギレフは、「天才を見つける天才」でした。ディアギレフは、その才能をいかんなく発揮して数多くの著名なダンサーを集めると、のちに伝説として語り継がれるバレエ団「バレエ・リュス」を立ち上げます。
バレエ・リュスには、バレエ史において不世出の天才と評されるロシアのバレエダンサー・振付家「ヴァーツラフ・ニジンスキー」がいました。フォーキンはモダンバレエの方向性を確立した人物といわれていますが、ニジンスキーはモダンバレエを確立した人物といわれています。
ニジンスキーによるモダンバレエの確立を決定的にした出来事が、「牧神の午後」という作品のパリ・オペラ座公演です。ニジンスキーによって作られた「牧神の午後」は、それまでのクラシックバレエの古典作品を真っ向から否定するようなものでした。
露骨な性表現が構成に組みこまれていたりと、あまりにも革新的だったため、初演時は舞台が終わってから数分の間、客席が沈黙に包まれたといわれています。
初演から大いに物議を醸した「牧神の午後」ですが、革新性の高さから人々の注目を集めることとなり、結果的には多くの人々から受け入れられる名作となりました。
この出来事から、「牧神の午後」はモダンバレエの元祖とも呼ばれています。
「牧神の午後」ができあがるまでのストーリーは、漫画にもなっています。ニジンスキーがどんな人物でフォーキンとどんな関係にあったのかがよく分かる一冊。漫画であれば理解もしやすいと思うので、気になる方はぜひ手に取って読んでみてください。
クラシックバレエとモダンバレエの違い
クラシックバレエとモダンバレエの違いについて、前章でも説明した通り、音楽や衣装など、細かなポイントの違いは数多くあります。しかし、それらはあくまでも手段における違いでしかなく、クラシックとモダンは根本の「目的」から大きく違うのです。
クラシックバレエは、
- 伝統という定められた枠の中で美しさを表現すること
を目的としているのに対して、モダンバレエは、
- バレエの既成概念を壊し新たな表現を創造すること
を目的としています。
なぜ目的が異なるバレエが生まれたのかは、前段の「モダンバレエの成り立ち」でも説明した通り。
バレエの動きをベースにしていることは共通していますが、それぞれが目指しているものは正反対といっていいほど違うのです。
【映像】モダンバレエとクラシックバレエの比較
これまで文章によってそれぞれの違いを説明してきましたが、バレエのような舞台芸術を文字による説明だけで理解するのは難しいですよね。それぞれのコンクール映像を見ていただけると、簡単に分かるかと思います。下記をご覧ください。
モダンバレエコンクール
こちらは、2014年に行われたつくばバレエコンクール モダンジュニアで1位を獲得した方の演技です。トゥシューズはおろかバレエシューズさえ履いておらず、動きも独創的なので、一見しただけではバレエなのかどうか分かりません。モダンバレエが、いかに一般的なバレエのイメージと乖離しているのかがお分かりいただけるかと思います。
クラシックバレエコンクール
こちらは、2017年に行われた第5回とうきょう全国バレエコンクール 小学生部門で1位を獲得した方の演技です。ヴァリエーションは、キトリの第3幕をセレクトしています。おそらく、バレエと聞いたときに多くの方がこちらのイメージを思い浮かべるのではないでしょうか? 冒頭でも触れた通り、こちらはクラシックバレエになります。
いかがでしょうか。先ほどのモダンバレエの映像と比較してみると、大きく違うことが分かります。モダンバレエとクラシックバレエは、同じバレエでもこれだけの違いがあるのです。
クラシックとモダン、子供に習わせるならどっちがいい?
子供にバレエを習わせようと思ったタイミングで、モダンバレエの存在を知る親御さんも多いのではないでしょうか。そのとき、クラシックバレエと一緒にモダンバレエも習わせたほうがいいのかどうか、頭を抱えてしまう方も少なくないと思います。
結論からいうと、筆者の意見としては両方ともバランスよく習うのがよいかと思います。モダンバレエも習うメリットについて、3つのポイントから解説します。
①自由な踊りを楽しめる
クラシックバレエは正解の形が決まっているため、それに忠実であることが重要です。決められた動きを、決められた通りにこなさなければならず、自我を出すことはあまり許されていません。ダンサーも機械ではないので、ある程度の自己表現は許されますが、それでも定められた枠の中に限られています。基礎に忠実な姿勢を求められることは変わりなく、子供によっては不自由を感じることもあるでしょう。
その点、モダンバレエはクラシックと比較して踊りの制限がほとんどないため、自由に踊ることができます。音楽に合わせて自由に身体を動かせるのは、子供にとって楽しいもの。クラシックだけをやるよりも、自由に踊れるモダンをレッスンに織り交ぜたほうが、バレエの楽しさを感じてもらいやすいでしょう。結果的に、習い事の継続にもつながるかと思います。
②想像力が養われる
クラシックバレエは、昔から語り継がれる古典作品を上演するため、物語のストーリーや展開は変えることができず、振付や音楽、衣裳も決められています。
例えば、白鳥の湖であれば、「王子がオディールに騙される」というストーリーは変えられないですし、「それによってオデット姫が悲しむ」という心情展開も変えることはできません。オディールに騙された王子の演技やオデット姫の悲しみを表現する振付もすでに決められたものが存在し、表現を創造する余地がありません。クラシックバレエは、決められた枠の中でしか表現の自由がないのです(しかし、伝統を踏襲しているからこそ生み出せる美しさがあることは間違いありません)。
その点、モダンバレエは自由が基本なので、ダンサーが創造する余地が多分に残されています。「物語をどう解釈するか、解釈した上でどのように表現するか?」 感じ方から表現方法までダンサーの手に委ねられているのです。
こういった作業は正解が存在しないため、想像力を刺激します。子供の感性を育てる上で、想像力の刺激は重要なことです。クラシックのレッスンだけでこのような経験を得ることはなかなかできません。クラシックバレエだけでなく、モダンバレエも一緒にやるほうが想像力を養うことができるでしょう。
③眠っている感覚が呼び覚まされる
モダンバレエでは、クラシックバレエにはない動きが登場します。例えば、クラシックでは、身体の軸は真っすぐに維持し、常に引き上がっていることが求められますが、モダンバレエにはあえて軸を外す動きもあります。こういった新しい動きを行うことで、今まで使ったことのない筋肉が刺激されます。そして、身体の新しい動かし方が感覚として得られ、結果的にバレエにおける表現の幅が広がります。
つまり、モダンバレエをやることが、眠っている感覚を呼び覚ますきっかけになる可能性があるということです。クラシックバレエだけを学んできた子供が成長に伸び悩んでいるとき、モダンバレエを学ぶことで殻を破れるというのはよくあること。バレエの上達に行き詰っている場合は、モダンバレエを経験することで成長できる可能性があります。
モダンバレエは常に変わり続ける
いかがでしょうか。モダンバレエについて詳しくご紹介してきました。
長々と説明をしてきましたが、モダンバレエはクラシックバレエの既成概念を壊すために生まれたものであり、現代的であること、つまり過去を塗り替え続けることを定義としているため、その時代によって姿かたちを変えます。
だから、今ここで説明していることも、いずれは過去のことになり、正しい内容とはいえなくなるでしょう。
時代の写し鏡としての役割を持ち、クラシックバレエでは掬いきれないダンサーや振付師の内なる情熱の受け皿となるモダンバレエ。その魅力に興味のある方は、ぜひ公演に足を運んて観に行ったり自身で習ったりしてみてください。
ちなみに、モダンバレエの教室は数多くありますが、人それぞれ認識が異なる場合があります。クラシックバレエと違って、これといった正解がないからです。もしモダンバレエを習いたい、子供に習わせたいと考えている方がいましたら、その教室がどんなモダンバレエを掲げているのか、確認してみることをおすすめします。
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