【海外】歴史と伝統を誇るロシアのバレエ団3選

団・ダンサー紹介

ルネサンス期にイタリアで生まれた「バレエ」は、フランスを経由し、そしてロシアで大成しました。現在、世界中で上演されている古典作品の「白鳥の湖」「ラ・バヤデール」「ドン・キホーテ」などの作品は、19世紀後半に、ロシアで活躍したフランス人の振付師「マリウス・プティパ」によって生み出されました。現代に伝わるバレエの代表的な古典作品は、そのほとんどがロシアで生まれ、バレエの歴史を築き上げてきました。

そんなロシア国内には歴史あるバレエ団が多数ありますが、「サンクトペテルブルグ」と「モスクワ」を二大拠点としており、中でも文化の栄えたサンクトペテルブルグにある「マリインスキー・バレエ団」からは「アンナ・パヴロワ」や「ヴァーツラフ・ニジンスキー」などの偉大なバレエダンサーや振付家が輩出されてきました。現在も、ロシア国内ではクラシックバレエの伝統が踏襲され、優秀なダンサーを輩出し続けています。

ロシアバレエの特徴は、なんといっても伝統を継承した格式高い踊りです。また、手足の長さやしなやかさを活かしたダイナミックな踊りとハイレベルなテクニックで観る人を魅了します。

今回の記事では、長い歴史と伝統があり、バレエ界を牽引し続けているバレエ団3つをご紹介します。その長い歴史と、各バレエ団の魅力や特徴についても解説しています。また、近年ロシアにおける日本人バレエダンサーの活躍が目覚ましく、所属している日本人ダンサーについてもご紹介します。今後の更なる活躍にも注目してみてください。

※情報は、執筆当時(2021年7月4日時点)の内容です

Bolshoi Ballet/ボリショイ・バレエ団(モスクワ)

世界三大バレエ団(フランスのパリ・オペラ座バレエ団、イギリスのロイヤル・バレエ団)の一つであるボリショイ・バレエ。ボリショイ・バレエは、首都モスクワの中心に堂々たる威容を誇る殿堂のボリショイ劇場を本拠地とし、サンクトペテルブルクのマリインスキー・バレエとともにロシアを代表するバレエ団です。

1773年に設立され、約250年もの歴史があり、1877年にはチャイコフスキーバレエの名作である 「白鳥の湖」 が世界で初めて上演されました。ソビエト連邦時代にはバレエ団が数百あったといわれるバレエ大国において、バレエ界を牽引する中心的な役割を担ってきました。

マリインスキー劇場は宮廷を起源とし、王族・皇族の庇護のもと貴族階級を対象にした劇場であったのに対し、ボリショイ劇場は、地元の名士(公爵)が開設し、裕福な商人階級向けに発展を遂げてきたと言われています。1902年ボリショイ・バレエ団長に就任したアレクサンドル・ゴルスキーは、ボリショイ劇場でのバレエ演目を増やすとともに、演劇改革運動に触発され、バレエの世界に新風をもたらしました。

レパートリーは、チャイコフスキーの三大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」や、「スパルタクス」 をはじめ、古典、新作など多岐にわたります。また、ボリショイ・バレエには支部としてブラジル南部の都市、ジョインヴィレにボリショイ劇場学校があります。

150人近くのダンサーが所属する世界有数の規模とスケールが大きく、これまでも数々のスターを生み出してきました。情熱的で大胆な表現により劇的なバレエを作り上げ、男性ダンサーの踊りのスケールの大きさや、男性主役の作品の多さが特徴です。

日本人バレエダンサーは、現在在籍しているダンサーはいませんが、過去、岩田守弘さんが在籍(1991年-2012年)し、卓越した技術力で、道化師や悪魔などの個性的な役を演じ、観る人を魅了していました。

名称ボリショイ・バレエ団
創立1773年
拠点Theatre Square, 1, Moscow, ロシア 125009
団員数Principals 16名
Leading Soloists 8名
First Soloists 9名
Soloists 18名
Working Under Contract 17名
沿革1773年 モスクワの孤児院のためのダンス学校として設立されたのが起源
1776年 検察官で熱心な舞台芸術愛好家のピョートル・ウルソフ公爵が、イギリス人の元アクロバット、マイケル・マドックスとともに、モスクワで初めての常設劇団を創立
1869年 「ドン・キホーテ」世界初上演
1780年 ペトロフスキー通りに演劇、オペラ、バレエのための劇場が完成
1877年 「白鳥の湖」世界初上演
1900年 プティパの教え子である振付師の「アレクサンドル・ゴールスキー」が芸術監督に就任
1924年 「ワシーリー・チホミーロフ」がゴールスキーの後任として芸術監督に就任
1941年 ドイツ軍の侵略により、1943年8月まで疎開
1945年 監督の「レオニード・ラヴロフスキー」のもと「シンデレラ」世界初上演
1954年 「石の花」世界初上演
1956年 ロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場で上演(ボリショイ・バレエを初めて西側に紹介)
1964年 キーロフバレエ出身の「ユーリー・グリゴローヴィチ」が芸術監督に就任
1995年 「ウラジーミル・ワシーリエフ」が芸術監督に就任
1995年 岩田守弘がボリショイ研究生として入団
2003年 岩田守弘がファースト・ソリストに昇格(当時、外国人としては史上初)
2000年 「アナトリー・イクサーノフ」が芸術監督に就任
2006年 作曲家「ショスタコーヴィチ」生誕100年を記念して「明るい小川」「ボルト」「黄金時代」の3作品を上演
2012年 岩田守弘が退団
過去に在籍した著名なダンサーレオニード・マシーン
ガリーナ・ウラノワ
マイヤ・プリセツカヤ
エカテリーナ・マクシーモワ
ウラジーミル・ワシーリエフ
アレクセイ・ファジェーチェフ
リュドミラ・セメニャカ
アレクサンドル・ゴドゥノフ
イレク・ムハメドフ
ニーナ・アナニアシヴィリ
アンドレイ・ウヴァーロフ
ニコライ・ツィスカリーゼ
アナスタシア・ボロチコワ
主なレパートリー愛の伝説
アンナ・カレニーナ
ドン・キホーテ
ジゼル
ジュエルズ
ラ・バヤデール
ファラオの娘
椿姫
くるみ割り人形
ライモンダ
ロミオとジュリエット
スパルタクス
白鳥の湖
くるみ割り人形
眠れる森の美女
シンデレラ
パリの炎
コッペリア
石の花
明るい小川
ボルト
黄金時代 等
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参考文献
ウィキペディア
ウィキペディア(岩田守弘)

Mariinsky Theatre/マリインスキー・バレエ団 (サンクトペテルブルグ)

マリインスキー・バレエは、ロシアのサンクトペテルブルクにあるマリインスキー劇場のバレエ団です。マリインスキー劇場の歴史は古く、1783年にエカチェリーナ2世の名により帝室劇場として設立されたのが起源で、オペラではワーグナー、バレエではチャイコフスキーが公演を行った場所として知られています。また、サンクトペテルブルク歴史地区と関連建造物群の一部としてユネスコの世界遺産にも登録されており、優雅で豪華絢爛な劇場です。

マリインスキー・バレエは、世界五大バレエ団の一つで最高峰とも言われ、ロシア国内で最も格調の高いバレエ団であり、クラシック・バレエの殿堂の地位を確立してきました。バレエ史に名を遺す「アンナ・パヴロワ」や「ヴァーツラフ・ニジンスキー」など多くの優れたダンサーや振付家を輩出したばかりではなく、バレエの歴史に多大な影響を残したバレエ団です。

ロシア帝国時代は、バレエ団への入団は貴族の子弟に限られていたため、貴族的かつ古典的な美しさと優雅さがあり、特に腕のラインが美しいことを特徴としていました。現在も、そのスタイルは受け継がれています。また、コール・ド・バレエ(群舞)の評価が高く、ソビエト連邦時代は、踊り手の身長や手足の長さなどのスタイルまで揃えていたそうです。これは、レベルの高いダンサーが豊富な証拠でもあります。

マリインスキー・バレエの名称は、ソビエト連邦時代に「キーロフ・バレエ(1935年 – 1991年)」と改称されましたが、ソビエト連邦解放後、以前の名称である「マリインスキー・バレエ」へと戻され、現在に至ります。

1860年に創立し、280年もの歴史と伝統を誇り、ロシア国内で最もレベルの高い「ワガノワ・バレエ・アカデミー」を擁し、常に素晴らしい人材を輩出しています。

日本人バレエダンサーは、現在3名が所属しており、2013年に日本人として初めて入団した石井久美子さんをはじめ、2018年に入団し、2021年6月にファースト・ソリストに昇格した永久メイさん、2018年に入団した安齋織音さんが在籍し、活躍しています。

名称マリインスキー・バレエ団
創立1783年
拠点Theatre Square, 1, St Petersburg, ロシア 190000
団員数Principals 13名
First Soloists 13名
Second Soloists 19名
Soloists Performing Characteristic and Acting Parties 10名
Corifei 20名
Corps de Ballet 129名
沿革1730年 フランス人ジャン・バティスト・ランデによりサンクトペテルブルクに帝室舞踊学校が創立された(マリインスキー・バレエの起源)
1783年 女帝エカチェリーナ2世の勅令によりオペラとバレエ専用のボリショイ劇場(サンクトペテルブルク)が建設され、活動拠点となる
1800-1850年 ロマンティック・バレエの隆盛
1850-1900年 クラシック・バレエの誕生
1860年 「マリインスキー劇場」が竣工(「マリインスキー・バレエ」の名称を使用)
1862年 「The Pharaoh’s Daughter」初演
1864年 「The Little Humpbacked Horse」初演
1877年 「ラ・バヤデール」初演
1886年 老朽化によりボリショイ劇場(サンクトペテルブルク)を閉鎖し、マリインスキー劇場を活動拠点とする
1890年 「眠れる森の美女」初演
1892年 「くるみ割り人形」初演
1895年 「白鳥の湖」初演
1898年 「ライモンダ」初演
1898年 「ミハイル・フォーキン 」入団
1899年 「アンナ・パヴロワ」入団
1907年 「レ・シルフィード」初演
1908年 「ヴァーツラフ・ニジンスキー」入団
1921年 「ジョージ・バランシン」入団
1922年 「ソビエト・バレエ」の名称を使用(言論統制により、旧名称は使用禁止となる)
1922-1991年 ソビエト連邦時代は、厳しい言論統制により上演できる演目が規制されていた
1935年 「キーロフ・バレエ」の名称を使用
1946年 「ユーリー・グリゴローヴィチ」入団
1956年 「スパルタクス」初演
1958年 「ルドルフ・ヌレエフ」入団
1967年 「ミハイル・バリシニコフ 」入団
1981年 「ファルフ・ルジマートフ 」入団
1992年 「マリインスキー・バレエ」の名称を使用
2013年 「石井久美子」が日本人として初めて入団
2018年 「永久メイ」がセカンド・ソリストとして入団し「くるみ割り人形」で日本人として初めて主役デビュー
2018年 「安齋織音」が入団
2021年 「永久メイ」がファースト・ソリストに昇格
過去に在籍した著名なダンサーミハイル・フォーキン 
アンナ・パヴロワ 
タマーラ・カルサヴィナ
ヴァーツラフ・ニジンスキー
ジョージ・バランシン 
ガリーナ・ウラノワ
ユーリー・グリゴローヴィチ
ルドルフ・ヌレエフ 
ナタリア・マカロワ 
ミハイル・バリシニコフ 
ファルフ・ルジマートフ 
主なレパートリー眠れる森の美女
白鳥の湖
ライモンダ
シェエラザード
ポロヴェツ人の踊り
スパルタクス
コレオグラフィック・ミニアチュール
石の花
愛の伝説
希望海岸
レニングラード・シンフォニー
ラ・シルフィード
ナポリリラの園
葉は色あせて
イン・ザ・ナイト
マノン
ナウ・アンド・ゼン
スプリング・アンド・フォール
サウンズ・オブ・エンプティ・ページズ
ラ・バヤデール
エチュード
結婚
春の祭典
イン・ザ・ミドル、サムホワット・エレヴェイテッド
ステップテクスト
シンデレラ
くるみ割り人形
ジゼル
ロミオとジュリエット
海賊
魔法のくるみ
イワンと仔馬
アンナ・カレーニナ
カルメン組曲
若者と死
真夏の夜の夢 等
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参考文献
ウィキペディア
ウィキペディア(石井久美子)
ウィキペディア(永久メイ)
ワガノワ・バレエ・アカデミーHP

Mikhailovsky Theatre/ミハイロフスキー・バレエ団 (サンクトペテルブルグ)

ミハイロフスキー・バレエ団(旧レニングラード国立バレエ団)は、ロシアのサンクトペテルブルクを拠点とするバレエ団です。拠点とするミハイロフスキー劇場は、1833年に設立されたロシアのサンクトペテルブルクに「帝室ミハイロフスキー劇場」として設立されました。1917年のロシア革命までは、専属のオペラ、バレエ団は持たず、主に演劇のみを上演していましたが、ロシア革命直後の1918年に、ロッシーニの「セビリアの理髪師」でオペラ劇場として再出発し、創立100周年を記念して1933年に「ミハイロフスキー・バレエ団」が設立されました。

団員の多くがマリインスキー・バレエの附属学校(ワガノワ・バレエ・アカデミー)の卒業生であり、ロシア国内でもトップクラスのバレエ団です。日本では「レニングラード国立バレエ」という以前からの名称で定期的に公演を行っており、その歴史は1981年に「レニングラード国立バレエ」として日本に初来日し、以降2012年まで毎年日本各地で公演を行っていました。

ロシア・バレエの伝統を継承するかたわら、時代を牽引する作品を上演してきたミハイロフスキー・バレエ団。特徴は、ロシア帝国時代からの培われた伝統と芸術性あふれるロシア・バレエのスタイルと、レパートリーが豊富な点です。それらを演じるダンサー達の美しさと品格、テクニックと表現力の豊かさもバレエ団の魅力です。

2011年より、スペインから招かれた鬼才振付家「ナチョ・ドゥアド」が芸術監督に就任しました。「ナチョ・ドゥアド」は、今をときめくコンテンポラリーバレエ界の寵児としてグローバルな活躍を見せている振付家であり、彼が就任したことにより、これまでのバレエ団の魅力を活かしつつも革新的なエッセンスを加えたことで、バレエ団としての求心力がいっそう増しました。

日本人バレエダンサーは、過去、高野陽年さんが在籍していました。高野さんは2011年に外国人として初めて「ミハイロフスキー・バレエ団」に入団し、2014年まで同団で活躍していました。現在は、ジョージア(旧グルジア)国立バレエ団でソリストとして活躍しています。現在は、田中美波さんがアーティストとして在籍し、活躍しています。

名称ミハイロフスキー・バレエ団 (旧:レニングラード国立バレエ団)
創立1933年
拠点Ploshchad’ Iskusstv, 1, St Petersburg, ロシア 191186
団員数Principals 8名
First Soloists 6名
Soloists 13名
First Artists 23名
Artists 77名
沿革1933年 劇場附属のバレエ団として「マールイ・バレエ」を創設(マールイは小劇場の意)
1930年 「フョードル・ロプホープ」が芸術監督に就任(~1935年)
1936年 「レオニード・ラヴロフスキー」が芸術監督に就任(~1938年)
1936年 「明るい小川」初演
1945年 「ボリス・フェンステル」が芸術監督に就任(~1965年)
1981年 日本初来日
2007年 「ミハイロフスキー・バレエ」へ改称
2007年 「ファルフ・ルジマトフ」が芸術監督に就任(~2009年)
2011年 「ナチョ・ドゥアト」が芸術監督に就任
2011年 「高野陽年」が外国人として初めて入団(2014年に退団)
2017年 「田中美波」が入団
主なレパートリー白鳥の湖
マクベス
くるみ割り人形
ジゼル
眠れる森の美女
海賊
ライモンダ
リーズの結婚
チッポリーノ
スパルタクス
レ・シルフィード
ラ・シルフィード
騎兵隊の休息
シンデレラ
バヤデルカ
ドン・キホーテ
竹取物語
ロミオとジュリエット
パキータ 等
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参考文献
ウィキペディア


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