クラシックバレエの名作『眠れる森の美女』のあらすじや見所を徹底解説!
今回の記事では、チャイコフスキー三大バレエ作品のひとつ「眠れる森の美女」について解説します。あらすじや登場人物はもちろん、作品の特徴や見所についても解説していくので、バレエ作品としての眠れる森の美女に興味のある方はぜひ読んでみてください。
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バレエ作品「眠れる森の美女」とは?
バレエにおける「眠れる森の美女」とは、ロシアの作曲家ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽とその音楽を用いたバレエ作品のことを指しています。
眠れる森の美女は、チャイコフスキーが遺した三大バレエ作品のひとつとして世に広く知られており、クラシックバレエにおける古典作品の中でも特に高い知名度を持っています。
眠れる森の美女ができるまで
眠れる森の美女の制作が開始されたのは1888年のこと。
当時サンクトペテルブルクの帝室劇場総裁を務めていたイワン・フセヴォロシスキーが「シャルル・ペローのおとぎ話『眠れる森の美女』をベースにバレエの音楽を作ってくれ」とチャイコフスキーに依頼したことがきっかけです。
フセヴォロシスキーはペローの「眠れる森の美女」をベースに改めて物語を書き下ろし、台本を作成しました。そして、チャイコフスキーはこの台本をもとに作曲を行い、振付にマリウス・プティパの力も借りながら、クラシックバレエ作品「眠れる森の美女」を作り上げたのです。
眠れる森の美女の登場人物
これからクラシックバレエ作品「眠れる森の美女」についてあらすじや見所、特徴などを解説していくのですが、その前に主要な登場人物をご紹介しておきたいと思います。
登場人物を頭に入れておいていただいたほうが、あらすじを理解しやすいと思うので、ぜひご一読ください。
眠れる森の美女に登場する人物は、主に4名です。
- オーロラ姫
フロレスタン国の次期王女。カラボスに呪いをかけられ、100年の眠りにつくことに。 - カラボス
邪悪な妖精。オーロラ姫の洗礼の儀式に呼ばれなかったことに腹を立て、生まれて間もない姫に呪いをかける。 - デジレ王子
フロレスタン国の隣にある国の王子。口づけによってオーロラ姫の目を覚まさせる。 - リラの精
カラボスの呪いを和らげ、デジレ王子を導いた善なる妖精。
バレエ作品「眠れる森の美女」のあらすじ
眠れる森の美女は、プロローグと3つの幕によって構成されています。これらに沿って、物語のあらすじをご紹介します。
プロローグ|オーロラ姫の生誕
フロレスタン王国に、次期王女となるオーロラ姫が生まれました。
王と王妃はオーロラ姫の生誕を大いに喜び、国を挙げて盛大な洗礼の儀式を執り行うことにしました。
儀式の当日、宮殿の広間では豪華な宴が開かれており、招待名簿の確認係であるカタラビュットは大忙しです。
やがて王室一家が来場し、続いて6人の妖精たちもオーロラ姫の誕生を祝うためにやってきました。
6人の妖精たちは、優しさ・元気・寛容さ・美声・勇気といった贈り物をオーロラ姫に捧げます。←見所①妖精の踊り
王夫妻はその様子を見て、「これでこの子は素晴らしい王女へと成長することでしょう……」と安堵します。
最後に善の精である「リラの精」がオーロラ姫に贈り物を捧げようとしたそのとき、邪悪な妖精カラボスが現れました。
カラボスは儀式に招待されていないことに腹を立て、手下を連れてやってきたのです。
妖精の招待はカタラビュットの役目、彼はカラボスの招待をうっかり忘れてしまっていました。
カタラビュットはカラボスの怒りを買い、かつらを外され辱めを受けてしまいます。
それでもカラボスの怒りは収まらず、生まれたばかりのオーロラ姫に呪いをかけました。
そして、王夫妻に向かってこう言い放ったのです。
「オーロラ姫は16回目の誕生日を迎えたとき、自らの指を刺して死ぬだろう」と。
王夫妻はカラボスに呪いを解くように懇願しますが、カラボスはそれを無視して嘲笑うかのように去っていきます。
悲しみに暮れる王夫妻のもとに、リラの精がやってきてこう言いました。
「王夫妻、安心してください。私はまだ、オーロラ姫に贈り物を捧げていませんでした。美徳を贈る代わりに、カラボスの呪いを死ではなく眠りに変えることができます。100年の長い眠りについてしまいますが、一人の王子の口づけによって姫は目覚めるでしょう」と……。
第1幕|100年の眠りへ
オーロラ姫は美しく成長し、無事に16歳の誕生日を迎えます。
誕生日の当日、祝宴が開かれる宮殿で編み物をしている娘たちがいました。カタラビュットがその様子を見て国王に報告すると、国王は激怒します。
オーロラ姫を守るために、編み物や縫物などの指を刺す恐れがある行いを禁止していたからです。しかし、めでたい日ということで王妃になだめられ、国王は怒りを収めました。
誕生日の宴には、4人の求婚者である王子たちが招かれています。
オーロラ姫は王子たちと踊りを楽しみ、王子は求愛の証としてバラの花を贈りました。←見所②ローズアダージオ
踊り終えたオーロラ姫のもとに、とある老婆が花束を差し出します。微笑みながら花束を受け取るオーロラ姫。清く正しく成長したオーロラ姫に、他者を疑うような心はありませんでした。
しかし、その花束には呪いのかかった針が仕込まれているのでした。老婆の正体は、邪悪の精霊カラボス。まんまとカラボスの罠にかかり、オーロラ姫は針を指に刺してしまいます。
倒れ込むオーロラ姫、カラボスは高笑いを上げながらその場を去っていくのでした。
そこへリラの精が現れ、カラボスの呪いを死から眠りに変えました。これによりオーロラ姫は、深い深い眠りについていきます。
また、オーロラ姫だけでなく城全体も茨に包まれていき、そこに居合わせた人間たちもみんな深い眠りについていくのでした。
リラの精が予言した通り、王子の口づけにより呪いが解かれるまでの100年、深い森の中で眠りにつくことになったのです。
第2幕|デジレ王子
100年の月日が経った頃、隣国のデジレ王子がお供の貴族たちと近くの森へ狩りに出かけていました。貴族たちは狩りを楽しんでいますが、デジレ王子は何故だか浮かない顔です。ついには、一人になりたいと言い始めました。
一人となったデジレ王子。そこへ突然、森の精を連れてリラの精が姿を現します。リラの精はデジレ王子にオーロラ姫の幻を見せました。
すると、デジレ王子はオーロラ姫の美しさに一目惚れし、リラの精に「オーロラ姫に合わせて欲しい」と懇願します。
リラの精は頼みを聞き入れ、デジレ王子をお城へと案内します。
100年もの歳月が経過した城は茨と太い蔓に覆われており、その中にはカラボスとその手下たちが見張りとして棲みついていました。
デジレ王子は剣を抜き、リラの精の力を借りながらも勇敢にカラボスたちを追い払います。そしてついに、城の奥で眠っていたオーロラ姫を見つけました。
美しく眠るオーロラ姫を見て、改めて見惚れるデジレ王子。ゆっくりと近づいて、優しく口づけをします。
王子の口づけにより、オーロラ姫は100年の眠りから目を覚ましました。同じように、城も人間も100年の眠りから解き放たれていきます。
王子を見て優しく微笑むオーロラ姫に、デジレ王子は愛を誓い、結婚を申し込むのでした。
第3幕|王子と姫の結婚
デジレ王子とオーロラ姫は結婚することになりました。
宮殿では華やかな婚礼の儀式が開かれています。リラの精を中心とする6名の妖精とカラボスも2人を祝うためにやってきました。
また、長靴をはいた猫や白い猫、おおかみと赤ずきんなど、様々なおとぎ話の主人公たちも来賓として招かれています。
デジレ王子とオーロラ姫を祝うために、華麗な踊りが披露されていきます。←見所③キャラクテールダンス
宝石と金銀の妖精の踊りから始まり、長靴をはいた猫と白い猫の2匹の猫のダンス、青い鳥とフロリナ王女の踊りへと繋がっていき、赤ずきんとおおかみの踊りが披露された後、最後はデジレ王子とオーロラ姫が美しいダンスを踊りました。
そしてついに、デジレ王子とオーロラ姫はリラの精に見守られながら結婚し、人々は愛と感謝を込めて妖精たちを讃え、物語は幕を閉じます。
バレエ作品「眠れる森の美女」の特徴
眠れる森の美女の特徴を3つのポイントに分けて解説します。
①バレエ音楽の中で最長!初演版は休憩なしで3時間
1つ目の特徴は、上演時間が非常に長いことです。眠れる森の美女はバレエ作品の中でも上演時間が長く、チャイコフスキーのバレエ音楽としては最長です。原型に基づく上演の場合、なんと休憩なしで3時間。
あまりの長さに短縮版が作られ、現在はそちらがメジャーとなっていますが、それでも上演時間は2時間を優に超えます。休憩を含めると3時間を超えてしまうので、眠れる森の美女は踊る方も観る方も体力が必要とされる作品なのです。
②「長靴をはいた猫」など個性豊かなキャラクターたち
2つ目の特徴は、個性豊かなキャラクターが沢山登場することです。眠れる森の美女には、長靴をはいた猫やおおかみと赤ずきんなど、ほかのおとぎ話の主人公たちが登場します。童話の主人公を務めるほどキャラクターの濃い彼らが入ってくることで、物語に賑わいが生まれているのです。
彼らは物語の本筋には関与しないため、いなくてもストーリーを進ませるのに困ることはありません。しかし、こういったクロスオーバーが入ることで観客が本筋の物語に没入しやすくなります。その意味で、眠れる森の美女という作品には彼らの力が必要不可欠なのです。
③舞台を煌びやかに彩るカラフルな衣装
3つ目の特徴は、衣裳がとてもカラフルなことです。眠れる森の美女は登場人物の数が多いため衣裳も沢山用意されるのですが、この衣裳の色のレパートリーが非常に豊富で、舞台を煌びやかに彩ってくれているのです。
例えば、6名の妖精やダイヤモンド・金銀・サファイヤの妖精などは、キャラクターごとにモチーフとなる色が異なります。色とりどりの妖精が魅せる華麗な踊りは、観るものを飽きさせません。
眠れる森の美女の見所を3つご紹介
眠れる森の美女という作品の見所を、筆者の主観から3つご紹介します。見所を抑えておくことで、観劇にメリハリがつきより作品を楽しめますよ。
見所①プロローグ「妖精の踊り」
まず1つ目の見所は、プロローグで披露される「妖精の踊り」です。このシーンでは、生誕祭に招かれた5名の妖精が、順番に一人ずつ踊りを披露してオーロラ姫に贈り物を捧げます。その贈り物とは、オーロラ姫が王妃として清く美しく育つために必要な「優しさ」「元気」「美声」など。これらは目に見えるものではなく、バレエダンサーは踊りによってその贈り物を表現します。贈り物によって全く表現の異なる踊りを堪能することができます。
見所②第1幕「ローズアダージオ」
2つ目の見所は、第1幕で披露される「ローズアダージオ」です。このシーンでは、16歳になったオーロラ姫に4人の王子が求愛の証としてバラを渡します。4人の王子が同じ踊りを繰り返すのですが、オーロラ姫はその間ずっとアティチュード(片足を軸にトゥで立つこと)を保ちます。
アティチュードのポーズで静止し続けるためには強靭な足先と抜群のバランス感覚が必要です。そのため、このシーンはフィジカルとスキルの両方が揃っていなければ演じることができません。しかも、バラを受け取るシーンのため、常に明るく笑顔で幸福そうな表情を保つ必要があります。バレエダンサーの技量と演技力を堪能できるシーンです。
見所③第3幕「キャラクテールダンス」
最後に紹介する見所は、第3幕で披露される「キャラクテールダンス」です。キャラクテールダンスとは、クラシックバレエの中でも演劇的な要素が強い踊りのこと。作品の特徴でも解説した通り、眠れる森の美女には他作品も含めた様々なキャラクターが登場します。
第3幕では、そのキャラクターたちがオーロラ姫とデジレ王子の結婚を祝うためにそれぞれの踊り=キャラクテールダンスを披露してくれるのです。個性豊かなキャラクターたちが披露してくれる愉快なダンスは、見応え十分。普段のクラシックとはまた違ったバレエを楽しむことができます。
あらすじや見所を抑えてバレエ作品「眠れる森の美女」を楽しもう!
いかがでしょうか? チャイコフスキー三大バレエ作品のひとつ「眠れる森の美女」について解説しました。これから観劇される方は、当記事であらすじや見所を抑えて「眠れる森の美女」という素晴らしいバレエ作品を楽しみましょう。
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